ディスプレイオーディオ ナビ編(前・中・後編)で紹介しましたが、2021年10月26日、準天頂衛星「みちびき初号機後継機」の打ち上げにともない後継機への対応、及び今後の各自動車メーカーの対応について聞いてみました。
その結果、各社の「みちびき」への対応姿勢として筆者は次のように受け止めました。
各社への質問は共通です。
質問内容
「みちびき」後継機について
読売オンライン;https://www.yomiuri.co.jp/science/20210910-OYT1T50166/新聞報道によれば「みちびき」11年前に打ち上げられた初号機がすでに設計上の寿命を迎えため、後継機が10月26日に打ち上げられました。
貴社HPによれば:https://faq.toyota.jp/faq/show?id=4646&site_domain=default
「ナビゲーションシステムは、「みちびき」の1号機の信号のみ 受信しています。
ただし、 位置情報の測位精度は、 従来のGPSと同等レベルです。」(注1)となっております。(※この部分はトヨタ自動車株式会社様のみ)
しかし内閣府みちびき(準天頂衛星システム)問い合わせ事務局に問合せしたところ衛星はそれぞれに固有の識別番号を持っており、初号機と後継機では異なった信号で識別しなければなりません。
そこでご質問ですがわが国の国策であり多額の歳費が投入されている「みちびき」への対応ですが、
1.初号機の代わりに後継機の信号を受信し測位出来るようナビゲーションのファームウェアをバージョンアップしてもらえるのでしょうか。
2.現在は初号機のみ信号受信しておりますが、「みちびき」は既に4機体制です。後継機の信号識別を可能にする場合他の「みちびき」も識別し測位に利用できるようになるのでしょうか。
なお、内閣府みちびき(準天頂衛星システム)問い合わせ事務局からは、「ハード変更の必要はありません。一方で、 受信する衛星を対応する衛星番号を設定するファームウェア等の変更が必要になります。
なお、現時点では、既に、カーナビ用受信機やスマホ用受信機など、様々な受信機で2号機以降も対応いただいております。」との回答を得ております。
3.内閣府は2023年度をめどに、24時間態勢で日本周辺を測位できる7基体制での運用開始を目指しており、7機体制になれば
GPSに依存せずに、QZSS(みちびき)単独で衛星測位による位置計算ができることになると事務局より回答を得ております。
そうなればGPSの測位に異常があってもナビゲーション機能が正常に働きますが、7機体制での対応を考えていますか。
ちなみに「みちにき」の衛星識別番号(PRNコード番号)は次の通りです。
PRN number
193 初号機(QZS01)
194 2号機(QZS02)
195 4号機(QZS04)
196 初号機後継機(QZS1R)
197 5号機(QZS05)
198 不使用
199 3号機(QZS03)
200 6号機(QZS06)
201 7号機(QZS07)
202 不使用
従って初号機(PRN number193)の代わりに後継機は(PRN number196)を識別しなければなりません。
本資料はIS-QZSSは、下記のURLよりダウンロードできます。
https://qzss.go.jp/technical/download/ps-is-qzss.html
よろしくお願いいたします。
- トヨタ自動車株式会社様
HPのチャットで問い合わせました。
回答;現時点では、「みちびき」については、お客様がご存じの状況です。
確認したところ、今後どのように対応していくかについては、このチャットサポートには情報がありませんでした。
ただ、今後の予定については、商品計画にもかかわることでもあり、ご案内はいたしかねます。
お客様よりお伺いしたご要望については、社内担当部へ申し伝えます。十分なご案内ができず、大変申し訳ありません。
現状ではトヨタ自動車株式会社様は、みちびき(準天頂衛星システム)に対して積極的な対応・利用を推進する意思は見えません。みちびきの利用に関しては非常に消極的と思われます。(トヨタディスプレイオーディオ ナビ(前・中・後編)にも記載あり、後記についても同様に触れている部分後ありますので、そちらもご参照下さい)
(注1)トヨタ自動車株式会社様はHPの変更も無く、ディスプレイオーディオのバージョン変更も無いことから、2021.12.04現在後継機に対応していないものと推測されます。
2.本田技研工業株式会社
HPのメールで問い合わせをこころみましたが、商談中店舗が必須項目のため断念しました。
トヨタディスプレイオーディオ ナビ(前編)の時は電話で質問しました。
この時の情報では車種ごとに対応が異なっておりました。ホンダ車のナビゲーションシステムについては、ご利用を考えている車種について個別にお問い合わせ下さい。
3.株式会社SUBARU様
SUBARUお客様センターにメールでトヨタ自動車株式会社様と同様の質問をしたところ、
回答:「お問合せいただいた「みちびき」の後継機の対応につきまして、確認しましたところ、あいにくご案内できる情報はございませんでした。」
従ってこちらも、トヨタディスプレイオーディオ ナビ(前・中・後編)でのアイサイトの情報止まりです。
4.日産自動車株式会社様
お客さま相談室にトヨタ自動車株式会社様同様の質問を致しました。
なお、回答メールには、「電子メールの一部、または全部を転記、転載などその他の目的でご使用になることはお控えください。」との注釈がありましたので筆者が概略を纏めました。
回答;日産オリジナルナビゲーションシステムは、16-17年モデル以降の機種におきまして「みちびき」からの測位信号を受信していますが、利用している衛生はQZO衛星(準天頂軌道)の1・2・4号機の3機です。(つまり静止軌道上のみちびきは利用していない)なお現時点では7機体制になっても静止衛星を利用せず、現行と同様にQZO衛星+GPSで測位するそうです。
(最初1号機の後継機PRNを1号機と同番号と回答頂きましたが、後継機のPRN番号は196と回答がありましたので1号機の寿命が尽き後継機に引き継がれるか、1号機と後継機の両方を受信できるようにするものと思われます)
日産自動車株式会社様の回答で静止衛星の「みちびき」を使用しない理由を考察しますと、みちびき(準天頂衛星システム)問い合わせ事務局様の情報によれば
「3号機は赤道上に位置する静止衛星のため、東京であれば南の方向に仰角40度程度に留まります。
当方で理由はわかりませんが、自動車は日本全国の道路を走行し、ビルや山などの遮蔽物に囲まれた環境を走行することも多いことから、そのような環境においても高仰角から信号を受信し易いQZOのみを使用しているのではないかと推測します。」とのことです。
しかし、同事務局様によれば
「7機体制になればGPSに依存せず、みちびき単独で測位することは可能です。
しかし条件があります。
1.みちびき7機すべての信号を受信可能とするデバイスを使用すること
2.測位する環境が、みちびき4機以上から信号を受信可能であること
※7機体制になると、例えば東京であれば仰角10度以上に4機以上のみちびき衛星が配置されることになります。」
つまり7機体制では「みちびき」だけで測位可能であるが、静止衛星の受信が出来なければ、「みちびき」だけでは測位不可能であると言うことです。
従って「みちびき」単独での測位が可能であってもGPS等の他の測位衛星を組み合わせて使用することで安定した精度で使用することがでると言うことです。
しかし、GPSが何らかの理由で受信できなくなる可能性は否定できません。バックアップとして「みちびき」単独での測位も備えるべきではないでしょうか。
追記2022.04.28
ゼンリン「3D 高精度地図データ(HD マップ)」がアリアのプロパイロット2.0に採用される(Auto Prove) | 自動車情報サイト【新車・中古車】 - carview!
日産自動車株式会社は測位精度を地道に向上にさせているようです。記事には「通常のシャークフィン・アンテナの他に準天頂衛星用のシャークフィン アンテナも装備」との記載もあります。
トヨタ自動車株式会社様は相も変わらず。HPにて「ナビゲーションシステムは、「みちびき」の1号機の信号のみ 受信しています。ただし、 位置情報の測位精度は、 従来のGPSと同等レベルです。」の記載変更がありません。後継機を受信しているのでしょうか。準天頂衛星システム 「みちびき」 には対応していますか? | トヨタ お問い合わせ・よくあるご質問
2024.03.24準天頂衛星初号機は後継機に業務を引き継ぎました、しかしながらトヨタのディスプレイオーディオはファームウェアのバージョンアップはなされておりません。
(上記記載の通り衛星識別番号(PRNコード番号)が異なるためファームウェアの変更なしに信号を受信できるとは思われませんが・・・)
相も変わらず。測位向上に無関心なのは自動運転技術や人の知覚以外の安全向上にメーカーとしての関心が乏しいのでしょうか。
qzss.go.jp現在トヨタ自動車株式会社様に問い合わせ中です。新たな情報が入りましたら記事を更新します。
謝辞:ご質問にご回答及びご協力 頂きました各企業・組織・対応して頂いた方々へ
お礼申し上げます。